誰が金魚を食べたの? 第1話
こんにちは。
秋田犬と暮らして23年、2頭の秋田犬を天国に見送り、現在2頭の秋田犬、虎毛の『ぱたこ』と赤毛の『こむぎ』との日々を楽しんでいるぱたこ母です。
「誰が金魚を食べたの? 第1話」
今回も最後まで読んでいただけたら嬉しいです。
【 第1話 】
「いたーい! またかんだな、このバカ犬!」
アキのパンチをくらう前に、ボクは外に向かって逃げだした。
アキのへなちょこパンチをくらうほど、ボクはまだまだ老いぼれちゃいない。
玄関の引き戸のほんの少しのすき間に鼻をつっこんで戸をこじ開け、ボクは外に駆け出した。
こんなにいい天気なのに、アキはストーブの前で縮こまっていて、外までは追いかけてこない。
アキは小学二年生。七才。スカートをはくのが大嫌いな女の子。
そして、ボクの飼い主。
まあ、実際に面倒見てやってるのはボクの方なんだけど。
ボクはピット。同じく七才。ポメラニアンの男の子。
ポメラニアンって知ってる?
犬だよ、犬!
ドイツの誇り高きお犬様さ。
そして、ここでいびきをかきながら眠っているのがリーフィー。
六才の秋田犬。
体の大きさはボクの十倍以上もあるのに、てんで気が弱くって、その上、暇さえあれば寝てばかりいるんだ。
体はデカイけど、リーフィーはかわいいボクの妹分なんだ。
(一歳になる前なのに、こんなに大きかったリーフィー。リーフィーが六カ月の時、一歳のピットが我が家にやって来ました。)
こいつが今番犬としてやっていけるのは、ボクの教育があったからこそなんだ。
人が来た時、ボクが吠えるってことを教えるまでは、こいつ、お客さんが来るたびに、小屋の中に逃げこんで縮こまっていたんだから。
ボクが人間に向かって死にものぐるいで吠えまくり、おどしをかけているのを見て、リーフィーも勇気をふりしぼったんだ。
あの時はほんとにおもしろかったよ。
いつも隠れていたリーフィーが、小屋から顔を出して、低くて太い恐ろしい声で、一声「ヴォン!」と叫んだものだから、となりのおばさんは腰を抜かして、回覧板を落っことしたんだ。
リーフィーの飼い主は、アキのアニキのケン。小学四年生なんだ。
あと、この家にはチビのリン子とお父さん、お母さん、それからおばあさんがいる。
庭は広くて、ボクとリーフィーが自由に追いかけっこできるようになっている。
事件が起きたのは、それから二日後のことだ。
この日もとても天気が良くて、冬にしては暖かい日だった。
ボクが窓辺のソファーで日なたぼっこをしていると、アキが学校から帰って来た。
ランドセルを背負ったまま、いつものようにボクに顔を近づけてくる。
「ケケケ君、ただいま。」
アキはなぜかボクのことを『ケケケ君』と呼ぶ。
『ピット』という素晴らしい名前に嫉妬して、ボクからその名を奪おうとしているのかもしれない。
「ケケケ君、今日のおやつは何ケケか?」
そう言いながら、自分の鼻をボクの鼻に押し付けてくる。
アキには学習能力がないのだ。
ピット様のお昼寝を邪魔すればどういう目に合うのか、まだ理解できないでいる。
ボクはいつものようにアキの鼻にカプッと噛みつき、パンチを受ける前にひらりとソファーから飛び下りた。
「いたーい! このバカ犬!」
アキも昔はかわいかったのに。
ボクが鼻をひとかじりすると、すぐに泣いて逃げだしていたんだ。
それなのに今は、
「お前なんか、ワンワン小学校に入れてしつけ直してもらうぞー!」
だもんね。
ワンワン小学校なんてあるもんか! 笑っちゃうよ。
おどすつもりなら、もっと相手が怖がるようなことを言ってみろよ。
まったく人間の七才っていうのは頭が働かないんだから。
(ワンワン小学校ならぬワンワン幼稚園へ入れられそうになったピット。笑)
ボクはいつものように玄関の戸を押し開けて外に出た。
外ではお母さんが洗濯物を取りこんでいた。
庭の周りを見まわりながら歩いていると、ボクたちの水飲み用のたらいの中で、金魚が五匹泳いでいた。
赤いのが三匹、黒いのが二匹。黒のうち一匹は出目金だ。
お母さんが水槽を洗うために、金魚たちをここに移したのだ。
「ピットー! 金魚食べちゃだめよ!」
たらいの中を覗き込んでいるボクに向かって、お母さんが叫んだ。
ネコじゃあるまいし、金魚なんか食べるもんか。
第2話に続く
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いつも年下の子は年上の子を真似て、色々なことを身につけてきました。
こむぎはぱたこを。
リーフィーはピットを。
らびこもピットのお世話になりました。
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古い写真で見にくいのですが、ピットと生後三カ月のらびこです。
いつもピットにくっついて遊んでもらっていました。
今日もお付き合い、ありがとうございました。
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