誰が金魚を食べたの? 第3話(最終話)
こんにちは。
秋田犬と暮らして23年、2頭の秋田犬を天国に見送り、現在2頭の秋田犬、虎毛の『ぱたこ』と赤毛の『こむぎ』との日々を楽しんでいるぱたこ母です。
「誰が金魚を食べたの?」第3話は最終話です。ピットはどのようにして濡れ衣を晴らすのでしょうか?
今回も最後まで読んでいただけたら嬉しいです。
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【 第3話 】
いよいよ計画を実行する時が来た。
ボクはソファーの隅に隠してあるビーフジャーキーを一つくわえると、家から飛び出した。
門の下をくぐり、道路に出る。
すぐ近くの角を曲がるとゴミ捨て場があり、そこにはいつも何匹かののらネコたちがいる。ここにいるのらネコたちはおやつと交換で、いろいろな用事を引き受けてくれることで有名だ。
動物は動物同志、助け合って生きていかなくっちゃならない。
ボクは一番すばしこそうなトラネコに目をつけると、そろそろと近づいた。
1メートルくらい離れた場所で静かに座り、ビーフジャーキーを下に落とした。
トラネコは、ボクとビーフジャーキーを交互に眺めている。
ボクはトラネコをじっと見つめながら、驚かさないようにそっと立ち上がり、一歩ずつゆっくりと後ろにさがった。
トラネコはボクがからかいに来たのか、用があって来たのか様子をうかがっているようで、ボクとビーフジャーキーをじっと見つめたまま、そこから一歩も動こうとしなかった。
けれど、トラネコがビーフジャーキーを食べたがっていることは一目瞭然だ。
さっきから何度もゴクリと生つばを飲み込んでいる。
いよいよビーフジャーキーがボクとトラネコのちょうどまん中になると、トラネコはビーフジャーキーを取りに来ようかどうしようかと、何度も立ったり座ったりし始めた。
それでもボクが後ろにさがり続けるのを確認すると、トラネコは思いきって一歩、前に足を踏み出した。
そしてボクの歩調に合わせ、一歩、また一歩とビーフジャーキーに近づき、
とうとうペロンと美味しいごちそうを口に入れた。
これで契約成立だ。
満足気に口の周りをペロッとひとなめすると、トラネコはじっとボクの目を見て、
「ご用件は?」
と尋ねた。
「まずはこっちに来てくれ。」
と、ボクは向きを変えると、一目散に家に向かって走り出した。
トラネコは後ろについて来る。
門の下をくぐり、トラネコを金魚のところまで連れて行くと、ボクは水を少し飲んでみせた。
トラネコも水を一口ペロッとなめるとボクを見た。
これでバッチリだ。
ボクは頷いた。
急いで家の中に入り、アキを外に連れ出そうと足元で吠えまくった。
けれど、ただでさえ怒っているアキは、ボクを蹴飛ばそうとし、全く動こうとしない。
それでも何とかならないかと、少し離れた場所でもう一度吠えてみたけれど、アキはボクの方を見ようともしなかった。
早くしないと、トラネコが本当に金魚を食べちゃうぞ。
そう言っても、アキにはわかるはずもない。
けれど運のいいことに、お母さんが洗濯物を取り込みに外へと出た。
やった! これでボクの作戦は成功だ。
ボクも急いで外に出た。
トラネコはまだそこにいる。礼儀正しいやつみたいで、ボクを待っていたのだ。
けれど困ったことに、お母さんはトラネコに気づかない。
仕方がない……。
トラネコには悪いけど、ボクは大声で吠えながらトラネコに向かって突進した。
さすがにお母さんもびっくりしてこっちを向き、トラネコが金魚を狙っていたと思い込んだようだ。
トラネコが入って来たところから無事逃げられるように、ボクはわざと大きく回りこんで追いたてた。
ボクの迫真の演技に、トラネコは目を白黒させて、慌てふためいて逃げていった。
トラネコには本当に悪いことをした。明日またビーフジャーキーを持って謝りに行こう。
「よかった。金魚はとられなかったみたいね。」
お母さんが洗濯物を抱えたまま、たらいの中を覗き込んでいた。
「アキー! きのう金魚をとったのは、きっとのらネコよ。」
家の中のアキに向かってお母さんがそう言うと、アキも外に出てきた。
「今、金魚を狙ってるのらネコを、ピットが追い払ってくれたのよ。」
「本当?」
アキは少しバツが悪そうにボクを見た。
ボクも真ん丸の目でじっとアキを見つめた。
「ごめんね、ケケケ君。」
アキは屈むと、照れくさそうに両手をボクの方にさし出した。
ボクはゆっくりとアキの腕の中に納まり、抱っこされた。
「ごめんね。ごめんね、ケケケ君。」
わかってくれればいいんだよ。ボクがやったんじゃないって。
アキは抱っこしたまま、いつものようにボクの鼻に自分の鼻を押し付けてきた。
カプッとやってやりたいところだけど、まあ、今日のところは我慢しておいてやろうかな。
『誰が金魚を食べたの?』 終わり
実際、猫さんはかなり肝が据わっていて、リードに繋がれた秋田犬のことなんてちっとも怖がりません!
猫に興味津々のこむぎ!
吠えても反応しない猫に、自分の力では無理と諦め、
「何とかして!」
と、お父さんに助けを求めていました💦
グイグイ行くはずのぱたこは、最初全く気付いておらず、出遅れた形になってパワー発揮できずでした(笑)。
『誰が金魚を食べたの?』最終話まで読んでいただき、ありがとうございました。
一言でも感想を聞かせていただけると嬉しいです!
今日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
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