ベスの青いアサガオ 第1話

こんにちは。

秋田犬と暮らして23年、2頭の秋田犬を天国に見送り、現在2頭の秋田犬、虎毛の『ぱたこ』と赤毛の『こむぎ』との日々を楽しんでいるぱたこ母です。

「ベスの青いアサガオ」は虐待された犬たち、または保護犬たちが一匹でも幸せになってくれたら、という想いを込めて創作しました。

今作も最後まで読んでいただけたら嬉しいです。

 

【 第1話 】

ボクが初めてその犬を見たのは、真夏の太陽がジリジリと肌を焼き付ける蒸し暑い午後だった。

夏季講習の帰り道、ボクが自転車を走らせながら見た光景は、とても恐ろしいものだった。

酔っ払って顔を真っ赤にしたおじさんが、クサリにつながれた犬を細い棒で何度も何度も打ちつけていた。

「このバカ犬!」

と叫びながら。

犬の背中の白い毛には、赤い血がにじんでいた。

遠目に見ているおばさんたちが、

「ほら、またやってる。」

と、眉をひそめてささやいている。

ボクはショックだった。

自分の飼っている犬を、なぜあんなに痛めつけたりするのだろう?

打ちつけられている犬のあの瞳。

その瞳には苦しさも悲しさもない。

ただ、諦めのみがあるようにボクには思えた。

ボクはその場から離れられなくなってしまった。

おじさんと犬のいる家の前を少し通り過ぎた四つ角で自転車を降り、ボクは木の茂みからじっと打ちつけられる犬の姿を見つめた。

ボクにはおじさんを止める勇気はなかった。

犬の痛みを思うと、ただ、ただ、悲しかった。

犬を救ってやれない自分が、情けなくって、悔しかった。

 

家に帰ってからも、ボクの気分はふさぎ込んだままだった。

ゲームをやっていても、お風呂に入っていても、

あの犬のあの瞳が頭から離れない。

あの細い棒が、犬の背中を打ちつける音が耳から離れない。

何も出来ない自分が、イヤでイヤでたまらなかった。

こんな気分は前にも感じた事がある。

そう、あの時と全く同じ、どうしようも出来ないイヤな気分だ。

今から3年前、ボクがまだ小学4年生だったころ、ボクはあの犬と同じ白い毛並みの、けれど体は倍くらい大きい、ベスという名の犬を飼っていた。

ベスはボクの親友だった。

ボクは毎日ベスを散歩に連れて行ったし、ベスもボクの言う事を本当によく聞いた。

キャッチボールが大好きで、ボクが投げたボールをもの凄いスピードで追いかけたものだった。

スキーにも一緒に行ったし、キャンプにも一緒に行った。

車の中で、ベスはいつもボクの膝にあごをのせ静かにしていた。

ベスはいつもボクの横にいたし、それが当然のことだと思っていた。

そのベスがボクの前から消えてしまったのは、川にキャンプに行った時のことだった。

その日は台風一過の晴天で、ほこりを洗い流された木々の緑が心地良い日だった。

川は台風の影響でずいぶん増水していた。

「絶対に川の中には入るんじゃないぞ。」

とボクは父さんから釘をさされた。

天気は最高だったものの、そんな状態だったので、周りには誰もいなかった。

遠くの方に車が2、3台見えるだけだ。

父さんたちが荷物を車から降ろしている間、ボクはベスをリードから離し、一緒に走り回って遊んだ。

その時だった。

突然強い風が吹きつけ、ボクの帽子が飛ばされたのは。

帽子はすぐ近くの川の浅瀬へと落ちた。ボクは拾おうと思ったのだけれど、もう少しのところで手が届かない。

川の中へ一歩足を踏み込もうとした時、絶対に川へ入ってはいけないと言った父さんの言葉を思い出した。

どうしよう。

そうだ、ベスなら大丈夫だ。ボクより泳ぎも上手だし、体も大きいんだから。

この浅はかな考えが親友を失う結果になろうとは、これっぽっちも思わず、ボクは何の迷いもなくベスに言った。

「ベス、取って来て!」

ボクの指差した先にある帽子に向かって、ベスは躊躇することなく川の中へと入って行った。

川の流れは思いのほか速かった。

帽子はどんどん流されて行き、それを追うベスもすぐに川の中心へ入り込んでしまった.

「ユータ!  何してるんだ!  早くベスを呼び戻せ!」

遠くから父さんの叫び声が聞こえた。

「ベース!」

ボクは思いっきり叫んだ。

あっと言う間だった。

ベスはボクの方を振り返り、そのまま川の流れに飲み込まれ、下流へ、下流へと流されて行ってしまった。

ボクはただベスの名を叫びながら、追いかける事しか出来なかった。

ただ流されて行くベスを見ていることしか出来なかったのだ。

川幅が広がって浅くなったところで、ベスはキャンプに来た他の人たちに助けられ、心臓マッサージをしてもらっていた。

ボクが呼んでも、ベスは瞳を開かなかった。

ボクがベスを殺したんだ。

川の中からボクを見た最後のベスの表情が、しばらくボクの頭から離れなかった。

その時のベスの顔に、あの犬の表情は驚くほど似ていた。

ボクの無力を見抜き、あきらめた表情。

 

第2話に続く

↓↓↓

ベスの青いアサガオ 第2話

 

ぱたこはプールは嫌いですが、泳ぐことはできます!

公園の噴水遊びが大好きなぱたこですが、プールは嫌いで盛り上がりません。

1歳の夏はそれなりに楽しんでいたのですが💦

こむぎは更に水嫌いで、生まれてこの方水遊びを楽しんだことがありません。

 

1歳の夏、いつもお世話になっていたサロンで水泳教室がありました!

楽しそうではありませんが何とか泳ぎ、「スイムドッグ初級」の認定書を頂きました(笑)。

この時は来年も、と思っていたのですが、翌年以降は開催されず、昨年サロン自体が閉店してしまったので、チャンスは多分もうないでしょう。

ぱたことこむぎにとってはラッキーなことだと思います(笑)。

 

これから暑くなります!

川の事故にはお気を付けください。

 

今日もお付き合い、ありがとうございました。

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