ベスの青いアサガオ 第2話

こんにちは。

秋田犬と暮らして23年、2頭の秋田犬を天国に見送り、現在2頭の秋田犬、虎毛の『ぱたこ』と赤毛の『こむぎ』との日々を楽しんでいるぱたこ母です。

「ベスの青いアサガオ」は虐待された犬たち、または保護犬たちが一匹でも幸せになってくれたら、という想いを込めて創作しました。

 

今回も最後まで読んでいただけたら嬉しいです。

第1話がまだの方はこちらからどうぞ

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ベスの青いアサガオ 第1話

 

【 第2話 】

あの犬が、細い棒で打ちつけられ、打ちつけられ、白い体がみるみる真っ赤に染まっていく。

それでも、まだ、細い棒は容赦無く犬の背中を狙い続ける。

「もう止めて!  死んじゃうよ!」

そう叫びながら、ボクはベッドからはね起きた。

身体中、びっしょり汗をかいている。

夢だったんだ。

外はもうほんのり明るい。時計を見ると四時だった。

その時、ボクはまだ何も考えていなかった。

ただ、何とも言えない嫌な気分に支配されているだけだった。

もう眠る気分にもなれず、ベッドから離れると服を着替え、台所に行ってイワシの缶詰を一つ持ち出した。

外に出て自転車にまたがると、あてもなくハンドルをきったが、目的地は分かっている。

あの犬の所だ。

 

ひっそりと静まり返った町に、セミの声だけが響いている。

ペダルを一生懸命踏むと、すぐに額に汗が浮かんで来た。

四つ角からあの犬をうかがって見るが、姿は見えない。まだ小屋の中で眠っているのだろう。

ボクは自転車から降り、静かに犬小屋へと近付いた。

門も塀もないので、犬小屋へは誰でも近付ける。

クサリの長さを目でおし測って、飛び掛られない距離から、ボクはそっと犬小屋の中を覗いた。

犬はもうボクの気配に気付いていた。小屋の奥に体を押し付け、おびえた様子で上目づかいにボクを見ている。

「おいで。」

と手を差し出すと、低く唸り声をあげた。

ボクは持って来たイワシの缶詰のふたを開け、犬の前に差し出した。

犬は二、三度鼻をヒクヒクさせたが、こちらに出て来る気はないようだ。

ボクは缶詰を犬小屋の前に置くと、犬が安心して食べられるように後ろへと下がった。

この犬は絶対にお腹が空いているはずだ。

あのおじさんがまともなエサを与えているはずがないじゃないか。

だから、絶対にこの缶詰を食べると思った。

けれど、食べたからといってどうなるわけでもない。

ただ、ボクの気持ちがほんの少し救われるだけなのだ。犬のために何かしてやったと。

 

ずいぶんと長い時が経ったように感じたが、実際にはほんの五分か十分くらいだっただろう。

犬はじっとボクの顔を見つめていたが、イワシの匂いにとうとうがまんが出来なくなったようだ。

腰を浮かせ、ボクの様子をうかがいながら、そろり、そろりと小屋から顔を出した。

イワシの缶詰に鼻をつけて匂いを嗅いだかと思うと、すぐにペロペロとなめ始めた。

缶詰の入れ物は小さすぎて食べにくそうだったので、ボクは犬を驚かさないようにゆっくり、ゆっくりと近付き、缶詰をそっと取り上げると、中身だけその場に出してやった。

その後はあっと言う間だった。

ペロッと平らげてしまい、何も無くなった地面をペロペロといつまでもなめ続けていた。

ボクは犬の首輪にそっと手を伸ばし、クサリを外してやった。

あのおじさんから解放し、自由にしてやったのだ。

 

 

犬はボクの後を付いて来た。

とぼとぼと。

遠慮がちに。

ボクが自転車を押す手を休めて振り向くと、犬も立ち止まり、そっぽを向いた。

「おいで。」

と手招きしても、寄ってこない。

けれど、ボクが歩き始めると、犬もまたボクの後に付いて歩き始めた。

家に着き、自転車を止めると、どうしようかとボクは考えた。

犬は家まで付いて来てしまい、片側の門柱におしりをぴったりとつけて座り込んでいた。

当然ボクからは目を逸らしている。

向かいの家の青いアサガオの花が、時々そよ風に揺れるのを見ているようだった。

ボクはバケツに水を入れ、犬の前に置いてやった。

家の中から、鳩時計の鳩が五回鳴くのが聞こえた。

ボクは良い事をしたのか、悪い事をしたのかよくわからないが、ほっとし、もう一度部屋に戻ってベッドに入る事にした。

 

第3話に続く

↓↓↓

ベスの青いアサガオ 第3話

我が家の秋田犬たちはお花が大好きです!

カモミールをフルーツ感覚でバクバク食べていました(笑)。

 

こむぎは子犬の時から金木犀が好きです!

 

今日も最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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