ベスの青いアサガオ 第3話
こんにちは。
秋田犬と暮らして23年、2頭の秋田犬を天国に見送り、現在2頭の秋田犬、虎毛の『ぱたこ』と赤毛の『こむぎ』との日々を楽しんでいるぱたこ母です。
「ベスの青いアサガオ」は虐待された犬たち、または保護犬たちが一匹でも幸せになってくれたら、という想いを込めて創作しました。
今回も最後まで読んでいただけたら嬉しいです。
第2話がまだの方はこちらからどうぞ
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【 第3話 】
目覚めたのは九時だった。
食パンをかじりながら外に出ると、犬はまださっきと同じ場所にいた。
太陽の熱で少し元気をなくした青いアサガオを、さっきと同じように見つめながら。
ボクはパンの耳をちぎり、犬の前に置いてやった。
犬はすぐに食べてしまった。
もう一度置いてやる。
「ベス。」
と呼んで見た。
けれど振り向くはずもない。この犬はベスではないのだから。
「あら、ユータ。おはよう。」
ジョーロ片手に、裏庭から母さんが来た。
「ユータ、その犬知ってるの? 朝からそこにいるんだけど。」
「知らないよ。」
ボクはウソがばれないように、つっけんどんに答えた。
「首輪してるし、飼い犬だと思うのよね。交番に届けた方がいいかしら。」
母さんはボクの後ろから、犬をのぞき込むようにして言った。
「どうせ捨てられたんじゃないの? 背中なんか傷だらけだし、こんなに痩せてるんだもん。いらない犬なんだよ。きっと。」
「そうねえ。可愛がられてるって感じはしないわねえ。」
「家で飼ってやろうよ。」
ボクは思いきって言ってみた。
「えっ!? あんたもう、犬は飼わないんじゃなかったの?」
母さんはとても驚いたようだった。
それもそのはず、ベスの事件があってから、ボクたち家族の間で犬の話が出た事はただの一度もなかった。
暗黙の了解で、「犬」という言葉は禁句となっていたのだ。
けれど、ベスの写真はテレビの上に飾ってある。
家族の一員だったベスの事を、言葉には出さないがみんなしっかりと憶えている。
「ユータが飼いたいんなら良いけど、でも飼い主が探してるといけないから、交番には届けておかないとね。」
「ありがと、母さん。交番にはボクが後で届けておくよ。」
ボクは交番には届けるふりをし、この犬をこのまま家で飼おうと心に決めた。
裏庭にはまだベスが使っていた大きな犬小屋がある。
門の前に座っていたのでは目立ち過ぎるので、ボクは犬を犬小屋の方へ連れて行こうと思った。
さっき交番に行くふりをして、スーパーで買ってきたビーフジャーキーを手に持ち、犬の鼻先でちらつかせた。
そのまま少しずつ裏庭の方へ後ずさりすると、犬もついて来た。
「よし、いいぞ、ベス。」
ボクはこの犬をベスと呼ぶ事にした。
この可哀想な犬には、ベスという名前以外、どうしてもぴったりとこなかった。
ボクは犬小屋の前までベスを連れて来ると、小屋の中へビーフジャーキーを投げ込んだ。
すると、ベスはボクの思い通り、小屋の中へと入って行った。
「良い子だね、ベス。今日からここがお前のお家だよ。」
ビーフジャーキーを食べ終え、こちらを向いたベスに手を差し出すと、ベスは白い歯をむき出して、低いうなり声を上げた。
そして、次の瞬間「ワン」と吠えたかと思うと、ボクの手にパクッと噛みついたのだ。
ボクはびっくりしてその場に尻もちをつき、慌てて庭の隅まで逃げたけれど、落ち着いてみると、それは噛みつかれたと言うよりは、なめられたと言った方が良いようなものだった。
今まで、さんざん痛い思いをしてきたベスは、その痛みが解かるからこそ、身を守るために威嚇はするものの、決して攻撃はしないのだろう。
人間に不信感を持っているベスに対して、不用意に近付き過ぎたボクのミスと言わなければ、ベスが可哀想だ。
けれど、これから先が思いやられた。
第4話につづく
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我が家の秋田犬たちは、どんなおやつでも目を輝かせます!
ビーフジャーキーでベスを裏庭に誘導したように、
ほとんどの犬はおやつを見たら目は釘付けです(笑)。
たいていの犬は食べることが大好き!
食べることに執着しない犬もいないことはないようですが。
嫌がる目薬をさす時にもおやつは効果大でした👍
ドギーボックスさんから頂いたおやつも大喜び♪
ただ、音の鳴るおもちゃは苦手です😅
今日も最後までありがとうございました。
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