プリンス・ハエタロウ 第3話

『プリンス・ハエタロウ』はハエ王国のプリンスが主人公の、クスッと笑えるナンセンスなお話です!

犬は登場しませんが、楽しんでいただけると嬉しいです!

こんにちは。

秋田犬と暮らして23年、2頭の秋田犬を天国に見送り、現在2頭の秋田犬、虎毛の『ぱたこ』と赤毛の『こむぎ』との日々を楽しんでいるぱたこ母です。

今回も最後まで読んでいただけたら嬉しいです。

 

第2話がまだの方はこちらからどうぞ

↓ ↓ ↓

プリンス・ハエタロウ 第2話

 

【 第3話 】

一時間目は国語の授業。

今日から新しいページに入るから、実夏先生が最初にお手本で読んでくれているのに、ハエタロウが右耳の中で何かをごそごそとやっていて、うるさくて聞こえない。

右耳を指で軽くとんとんと叩くと、ハエタロウがもの凄い剣幕で、

「触るな!」

と叫んだ。

ボクは声に出さずに、

「おぼえてろよ、このハエ!」

と、握り拳を作って心の中で呟いた。

「今、鼓膜に通信装置を取りつけているところなんだから、体を動かすなよ。

精密機械っていうのは、デリケートで取り扱いが難しいんだから。」

はあーっ? 通信装置?

コントロール装置の次は通信装置かよ!

なんだかボクはハエタロウにどんどん改造されていく運命にあるみたいだ。

このままだと、本当にハエ人間にされてしまうかも。

でもそうなれば空を飛べるようになるかもしれないし、うまくいったら勉強からも逃れられるかもしれない。

ハエ人間も案外良いかも。

ボクは自分が大空を飛び回っているところを想像してみた。

でも行き着く先は、きっと、、、犬のフン。

ボクは想像を打ち消すように、慌てて首を大きく横に振った。

「動くなって言ってるだろ!」

ハエタロウが耳の中でまた怒った。

 

休み時間になる度に、その日は学校のいろんな場所を案内させられた。

コントロールされたら不自然な動きになって怪しまれるから、ハエタロウの命令通りに動くという条件で、ボクは自分の意思で動くことを許された。

音楽室や理科室なんてのはまだよかったけど、職員室やトイレなんて、用もないのにうろうろできない。

ハエタロウを説得するのに苦労するかと思ったけど、ハエタロウはあっさり引き下がった。

その理由は、そこの場所では「食べものの匂いがしないから」。

給食の片付けの時間になると、ハエタロウはいちだんとはりきり出した。

「あの余った給食はどうするんだ?」

給食当番がまだおかずの残った鍋やバットを教室から運び出そうとした時、ハエタロウが耳の中で聞いた。

「たぶん給食センターに持って帰って捨てちゃうんじゃないかな。」

ボクはみんなに聞かれないように小声で答えた。

「捨てちゃうって!! もったいない!」

ハエタロウはよほど興奮したのか、ボクの耳には鼓膜が張り裂けそうなほどの振動がきた。

「うわっ!」

ボクはあまりの大きな声に、思わず声をもらしてしまった。

「ハエタロウ、うるさいよ。もう少し静かに話してくれよ。」

小さい声で言ったつもりだったのに、右耳を押さえているボクの背中にはイヤな視線が突き刺さった。

「ハエタロウって? それがお前の名前なのかよ。やっぱりお前ってハエなんだ。」

後ろを振り向くと、そこにはバカ笑いしている西岡の顔があった。

違う、ボクはハエなんかじゃない!

その言葉が喉元まで出てきてたけど、ボクの体はがちがちに固まってしまっていて、口が開かなかった。

「おい、みんな、こいつの名前はハエタロウだってさ。今度からそう呼んでやろうぜ。」

ボクのバカヤロウ!

よりによって西岡に聞かれちゃうなんて。

「ほら、ハエタロウ! この給食の残り全部やるから、食べ終わったら片付けとけよ。」

『えっ! 本当にいいのか。』

ボクの口から飛び出した意外な言葉に、西岡は目をまん丸くした。

そこにいた誰もの目がまん丸くなった。

ボクの目もまん丸くなってしまった。

一瞬の間をおいて、みんながお腹を抱えて一斉に笑い転げた。

「こいつ、ほんとにハエになっちまったよ! こんな残飯食べるなんてよ!」

西岡はお腹がよじれんばかりに笑い転げながら、苦しそうに言った。

『残飯と言ったって、れっきとしたの笑い声がより一層大きくなった。

ボクの顔は恥ずかしくて真っ赤だ。

あまりのご馳走に興奮したハエタロウにボクの体はコントロールされ、さっきから言うことをきかなくなってしまっていた。

ハエタロウがボクの口を使って勝手にしゃべる。

お願いだから、もう止めてくれ!

『捨てるなんてもったいない。

仲間を呼び集めれば、みんな大喜びだ。

おい、お前! どこか校庭の隅に残飯置き場を作って、これを運んでくれたまえ。』

よりにもよって、ハエタロウは西岡を指差した。

「なんだよ、エータ。

お前、ハエの王様にでもなっちまったのかよ。」

西岡は、もう可笑しくって可笑しくって堪らないといった様子で言った。

『何を言ってる!

ボクはもともとハエ王国の王子、プリンス・ハエーライド・ハエタロウだ。』

あぁ・・・、もうだめだ。

みんなの笑い声が遠退いていく。

あまりのショックのため、ボクは気が遠くなり、そこから先のことは憶えていない。

 

気がついたら、家のベッドの上で横たわっていた。

今までのことは全部夢だったのだろうか。

首をほんの少し動かし、何気なく机の上に目をやると、諸悪の根源、ハエがパソコンのキーボードの上をせわしなく飛び回っていた。

夢じゃなかった。

途端にボクの目の前は真っ暗になった。

思い出したくもない、今日の学校での出来事。

明日からどんな顔して学校へ行けばいいんだろう。

また、ばか笑いされるに決まってる。

「おい、ハエタロウ!

今日はよくもボクに恥をかかせてくれたな。

明日から恥ずかしくて学校へ行けないじゃないか。」

ハエタロウは動きを止めると、空中でこちらを振り向いた。

 

次回に続きます。

 

いじめられてはいませんが、ぱたこは犬社会のお友達とは馴染めません💦

ぱたこ2歳、こむぎ1歳2カ月の時です。

この頃はまだそれほど威嚇しなかったぱたこさん。

トレーナーさんの愛犬とご一緒させていただきましたが、仲良くなれる雰囲気ではありませんでした💦

 

今日も最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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