プリンス・ハエタロウ 第4話

『プリンス・ハエタロウ』はハエ王国のプリンスが主人公の、クスッと笑えるナンセンスなお話です!

 

犬は登場しませんが、楽しんでいただけると嬉しいです!

 

こんにちは。

秋田犬と暮らして23年、2頭の秋田犬を天国に見送り、現在2頭の秋田犬、虎毛の『ぱたこ』と赤毛の『こむぎ』との日々を楽しんでいるぱたこ母です。

今回も最後まで読んでいただけたら嬉しいです。

 

第3話がまだの方はこちらからどうぞ

↓ ↓ ↓

プリンス・ハエタロウ 第3話

 

【 第4話 】

「通信装置、スイッチ、オン」

機械的な音が聞こえたかと思うと、続けてハエタロウの声が聞こえてきた。

「学校へ行かない? どうして? あんなに美味しい給食があるのに。」

「どうしてって! よく言えるな。

お前がボクに『ボクはハエだ』なんて言わせたからじゃないか。

みんなボクのことを変人だと思ってるよ。

今まで以上に『ハエ』だってバカにされるよ。」

「どうしてハエじゃいけないんだ。ハエは人間よりも偉いんだぞ。」

「ハエが人間よりも偉いって? へっ! ばかばかしい。

おかしくって笑っちゃうよ。」

ボクはもうこんなやつ相手にしててもしょうがないと思った。

「笑っちゃうのはこっちのほうだね。

そう思ってるのは人間だけさ。

エータはハエ王国に来たことがないからそう言うんだ。

文化だって科学だって、人間社会よりもずっと発展している。

ハエは飛ぶこともできるし、その気にさえなれば病気を蔓延させて人間をやっつけることもできる。」

ハエタロウはマウスの横に飛び下りると、腰に手をあてて仁王立ちになり、大きな目でボクの顔を見た。

「ハエが人間より偉い証拠、それはエータが一番よく知ってるじゃないか。

ボクにコントロールされると、エータはそれに逆らえない。

それこそが一番わかりやすい証拠じゃないか。」

そう言うとハエタロウはいかにも偉そうに、その場にふんぞりかえった。

「ハエがそんなに偉いのなら、じゃあなんで人間の残飯なんかを漁るんだよ。

自分たちで作ればいいじゃないか。」

ボクは悔しくなって言い返した。

「それは、人間が地面を占領してるからさ。

飛ぶことができない人間は地面の上で生活するしかしょうがない。

だから、ボクたちハエは人間に地面を使わせてやっているのさ。」

「それで、その代わりに人間に畑を作らせて、食べものを提供させてるってわけかい。」

ボクは嫌味ったらしく、ハエタロウに向かって大声で言った。

「さすが! エータは選ばれただけあって物分かりがいい。」

「そんなことでほめられたって、ちっとも嬉しくなんかないよ。」

「人間は地面を独占させてもらっている恩を忘れて、食料までも独り占めにしようとし始めている。」

「食料を独り占めって?」

「昔は、ご飯の残り物はノラ犬、ノラネコ、カラス、そしてハエの物と決まっていた。

それなのに、今では人間はラップをぴったりかけて冷蔵庫に閉まってしまう。

捨てる時でさえビニール袋に入れて、ふたのついたごみバケツに捨ててしまって、

ボクたちハエに食べ物を渡すまいとしている。

このままいくと、人間は食べ物だけでなく、地球上の全ての物を独り占めしようとするかもしれない。

まあ、そうなったらこちらでコントロールするまでの話だが。」

「そう言われればそうかも・・・。」

考えてみたら、本当にハエたちの食べ物は、昔に比べたらもの凄く減っているのだろう。

ボクはほんの少し、ハエタロウの言い分も正しいような気がしてきた。

「そうだよな。ハエだって同じ地球で暮らす仲間だもんな。」

「そこでだ、エータ。」

ハエタロウはパソコンの画面に映し出された学校の地図を指差した。

「今、パソコンを借りてネットで調べたんだけど、お前たちの小学校には竹林があるよな。」

「うん、あるよ。春になるとみんなでタケノコ掘りをするんだ。」

「その裏手に山があるみたいだけど、そこは何に使ってる?」

「さあ? 何にも使ってないんじゃないかな。

ボクたちはそこまで行ったことがないから、よく分からないけど。」

「それじゃ決まりだ。その山の入り口を残飯置き場にしてもらおう。」

ハエタロウは左の中足でリモコンのボタンを押すと、学校の地図をプリンタで印刷にかけた。

プリンタから地図がはき出され、

ハエタロウがそれに向かってリモコンをピッと押すと、今言った場所が赤くマークされた。

「凄いなあ! やっぱりハエって凄いのかなあ。」

驚くボクに、

「今ごろわかったのかよ。

だから、エータも『ハエ』って言われたら胸を張ればいいのさ。」

「そうなのかなあ?」

なんかちょっと違う気もするけど、もしかしたらそうなのかもしれない。

明日、西岡に何か言われたら、言い返してやろうかな。

少し、自信が湧いてきた。

「そうなのさ。だいたいエータがだらしないから、クラスのやつらがハエをバカにするんじゃないか。

ハエの素晴らしさを知っているエータが、それをみんなに言わないから。」

「そんなこと言ったって・・・。

ハエのほうが人間よりも頭が良いだなんて言ったって、誰も信じやしないよ。

特に西岡なんて、またバカ笑いされておしまいに決まってる。」

「西岡って、校庭の隅に残飯を運ぶように頼んだのに無視した、あの生意気なやつのことか?」

「そうだよ。」

「そうか、あいつが諸悪の根源なのか。」

諸悪の根源?

ボクはハエタロウのことを諸悪の根源だと思ってたけど、本当の諸悪の根源は西岡なのかも。

だいたい、最初にボクのことを『ハエ』呼ばわりしたのは西岡だったんだし。

ハエタロウに八つ当たりするのは、間違っていたかもしれない。

「よし、あいつ、明日ハエタロウ様が思い知らせてやる!」

 

次回に続きます。

 

我が家に訪れたハエタロウに対して手荒な歓迎をするぱたことこむぎ💦

安心してください!

食べてはいません💦

 

今日も最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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