プリンス・ハエタロウ 第5話

『プリンス・ハエタロウ』はハエ王国のプリンスが主人公の、クスッと笑えるナンセンスなお話です!

 

犬は登場しませんが、楽しんでいただけると嬉しいです!

こんにちは。

秋田犬と暮らして23年、2頭の秋田犬を天国に見送り、現在2頭の秋田犬、虎毛の『ぱたこ』と赤毛の『こむぎ』との日々を楽しんでいるぱたこ母です。

今回も最後まで読んでいただけたら嬉しいです。

 

第4話がまだの方はこちらからどうぞ

↓ ↓ ↓

プリンス・ハエタロウ 第4話

 

【 第5話 】

「思い知らせてやるって、何するつもり?」

ボクの問いかけに、ハエタロウは前足でパンチを、後ろ足でキックをする素振りをして見せた。

まさか・・・。

ボクの顔は悪いことを想像して青くなった。

「まさか、ボクの体を使ってやるんじゃないよね?」

ボクは恐る恐る聞いた。

「エータの体を使わないで、他の誰のを使う?」

思ってた通りの答えに、ボクは半分泣きそうになりながらハエタロウに必死で頼み込んだ。

「やめてくれよ!

ケンカなんてやだよ。お願いだから。」

「じゃあ、どうする?

このままじゃ、西岡はエータのこともハエのことも、バカにしたままだぞ。

エータはそれでいいのか?」

「よくはないよ・・・。」

ボクは必死に考えた。

西岡にボクの気持ちをわかってもらう方法を。

たった一つしかない方法。

それは最初からわかっていたんだ。

自分できちんと言うしかないって。

「ボクがなんとかする。」

きっぱりとしたボクの口ぶりに、ハエタロウは納得したのか、

「じゃあ、頼んだぞ。明日の給食の後、竹林の裏手で待ってる。」

と、仲間を集めに、窓の外へとせわしく飛び立っていった。

 

次の日の朝、昨夜ハエタロウが赤丸をつけた地図を手に持って、ボクは学校へと向かった。

教室に入ると、後ろからやって来た西岡がボクの手から地図を奪い取った。

「なんだよ、これ。

ハエ王国の宝の地図か?

ハエタロウ王子さま。」

そう言うと、西岡はゲラゲラ笑った。

ボクは両手を力いっぱい握り締めた。

言うんだ、エータ!

言うんだ!

ハエだって立派な生きものだ。

「それは・・・、」

「それは?」

西岡が睨みつける。

負けちゃだめだ。

「それは、ハエのための給食の残りもの置き場の地図だ。」

「はあー?」

西岡も、周りにいるみんなも、呆気にとられた。

そしてすぐにクスクス笑い始めた。

「ハエのための残りもの置き場だってさ!

ハエタロウ王子は、今度はハエのための給食当番になったみたいだぞ。」

西岡がバカにするような調子で言った。

ボクは勇気を振り絞った。

「ハエだって、ボクらと同じ地球上で暮らす生きものだ。

バカにするな!」

まるでハエタロウがボクに乗り移ったような言葉が口から出てきた。

でも、これは今のボクの素直な気持ち。

「ハエをバカにするな!!」

ボクのもの凄い剣幕に、西岡も他のみんなもクスクス笑いを止めて黙り込んだ。

「バカじゃねぇの・・・。」

ボクの怒鳴り声に圧倒された西岡は、捨て台詞のように小さな声でそう呟いた。

「バカかどうか、今日の給食の後、一緒にその地図の場所まで来てみればわかるさ。」

ボクは胸がすっきりした。

自分の気持ちをちゃんと言えたから。

 

一時間目の授業が終わり休み時間になっても、もう誰もボクのことを『ハエ』とは呼ばなかった。

考えてみれば、これはハエタロウのおかげかもしれないな。

ボク一人だったら、朝のようなあんな勇気はきっと出せなかった。

お昼には大ご馳走を持って竹林の裏手の山に行こうと思った。

四時間目の終わりのチャイムが鳴ると、ボクはもう一度勇気を出して手をあげた。

「なあに、エータくん。」

実夏先生の問いかけに、

「給食の残り、竹林の裏手の山に持って行っていいですか。」

と思い切って言った。

「持って行ってどうするの?」

実夏先生は不思議そうな顔をした。

ボクが困った顔をしていると、一人の女子が手をあげて助け舟を出してくれた。

「畑の肥料を作るんです。

うちのおばあちゃんがやってます。

残りものの上にアスパをかけるんです。」

「そう、それはいい考えね。」

実夏先生はにっこり笑いながら頷いた。

「やったー!!」

「バカじゃねぇの」

と言う西岡の声が聞こえてきたけど、ボクは小さくガッツポーズをした。

その日の給食は、クラス全員あっという間に食べ終え、おかわりする人もいなくて、いつもより多くおかずが残った。

みんな竹林の裏手の山で何が起こるのか気になっているようだった。

余ったおかずをバケツに移し替え、ボクは竹林の裏手へと向かった。

 

次回に続きます。

 

ぱたことこむぎの散歩コースにも小さな竹林があります。

春にはタケノコがニョキニョキ!

掘って良いのでしょうか?

「掘りたいな」と思いながら、いつも横目に通り過ぎます(笑)。

 

今日も最後までお付き合いいただきありがとうございました。

 

 

0



同じカテゴリの記事



アプリなら通知ですぐ読める!

NAPBIZブログ

NAPBIZブログ



       
This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.