ネコクイを追いかけろ! 第2話
「ネコクイを追いかけろ!」は、瀬戸内海に浮かぶ小さな島で夏休みを過ごすことになった少年の成長物語です。
こんにちは。
秋田犬と暮らして23年、2頭の秋田犬を天国に見送り、現在2頭の秋田犬、虎毛の『ぱたこ』と赤毛の『こむぎ』との日々を楽しんでいるぱたこ母です。
今回も最後まで読んでいただけたら嬉しいです。
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【 第2話 】
この島に来て三日間、おばさんの再三にわたる「外でも歩いてきたら」という言葉を無視し、
ボクは外には一歩も出ずに、最初の日に買ってもらった二冊のマンガを読み続けた。
その二冊とも十回以上は読み、そろそろ飽きてきたころにおばさんが提案した。
「こうすけ、せっかく島に来たんじゃけぇ、少しは外に出てみたら。」
「うん。」
ボクはいつものように生返事を返した。
「おばちゃん考えたんだけど、用もなくぶらぶらするのが嫌だったら、毎日の買い物、こうすけが行ってくれんかなぁ?
そしたらおばちゃんも助かるし、こうすけにもまたマンガ買ってやるけぇ。
一週間行ってくれたら一冊でどうじゃろ。
悪い条件じゃないと思うけど。」
もちろん悪い条件ではなかった。
ほとほと暇を持て余していたボクにとってはむしろ歓迎すべき申し出だ。
おばさんに頼まれてしぶしぶ外に出かけるというかっこうの口実になる。
ボクは本心を隠し、ふてくされたポーズを崩すことなく答えた。
「いいよ。」
なぜこんなにも素直になれないのか、自分でもよく分からなかった。
ただ単に照れくさかっただけなのかもしれない。
買い物という名目を与えられたボクは、それ以外にも外にちょくちょく出るようになった。
いったん外に出てみると、この島は面白い場所であふれていた。
あの橋といい、古い住宅地の中を迷路のように走る細い道。
みかんの運搬用に造られた、山腹を走るトロッコの細いレール。
澄んだ海の中に浮かんでいる全長十メートルほどの細長い島には、小さな祠が建てられていて、引き潮の時には水の中を歩いて渡ることができた。
おばさんの婦人用の自転車を借りて、島の中を走り回るようになったボクを見て、おばさんもほっとしているようだった。
時々、夕方の涼しい時間、ボクは図書館で本を借り、裏手にある公園のベンチで本を読んだ。
草が伸び放題の手入れされてない公園だったけれど、遊びに来る子どもは一人もいなくて、それがかえってボクには好都合だった。
よそ者のボクが、誰にも気がねすることなくのんびり過ごせる場所だった。
図書館は山のふもとにあり、道路よりも家一軒分高い位置にあった。
公園も、そして細い道をはさんで隣に建っている公民館も、図書館と同じ高さにあり、間を抜けるその細い道は両側を高い壁に挟まれ、ボクから見たら異様な空間だった。
けれど、そこに住む人たちは何のためらいもなく、地の底のようなその道を行き来し、日常を過ごしていた。
ある日、いつものように木陰のベンチで借りてきたばかりの本を読もうと腰掛けると、なんともか細い鳴き声が聞こえてきた。
なんだろうと思い辺りを見回すと、背の高い草がひどく生い茂った一画の、ねこじゃらしの穂が軽く揺れた。
ボクは本を閉じると脇にかかえ、足音をたてないように、ゆっくりとそちらに向かって歩いた。
さびた鉄棒ごしにつま先立ってのぞきこむと、木の根もとで大きなオレンジ色のネコがボクをじっとにらみつけた。
横たわったお腹では、小さな子ネコたちがおっぱいを飲んでいる。
ボクは母ネコの鋭い視線に身動きがとれず、しばらくそのまま母ネコとにらみ合った。
照りつける太陽の暑さに我にかえり、ボクは近づく時にそうしたように音をたてないように後ずさりし、公園から外に出た。
次の日、あの母ネコの迫力ある目に圧倒されたボクは、公園には近づいてはいけないような気がして、どこにも出かけなかった。
そしてその翌日も、涼しい部屋で一日中おばさんに買ってもらったマンガを読んで過ごした。
夕方買い物に行く時間になり、一週間のごほうびにもらった五百円を手に外に出たボクは、あまりの暑さに頭がくらっとした。
セミの声を聞きながら、ふとネコのことを思った。
この暑さの中、あのネコの親子は生きていけるのだろうか。
あんなに小さな子ネコをかかえ、母ネコはごはんを食べているのだろうか。
いったん考えだしたら、ネコのことが気になって頭から離れなくなってしまった。
あの威嚇するような目は強がりで、本当はボクに助けを求めていたのかもしれない。
そう思うといてもたってもいられなくなり、マンガはあきらめてあんパンを一つ買い、ネコたちのいる公園へと向かった。
二日前と同じように足音をたてないように鉄棒に近づき、つま先立って見ると、ネコたちは元気そうだった。
母ネコはボクに気付くと子ネコたちをなめるのをやめ、体を強ばらせてじっとボクを見た。
母ネコの緊張が伝わったのか、子ネコたちもおっぱいを飲むのを止めボクの方を見ている。
ボクはネコたちを驚かせないようにあんパンの袋を静かに破ると、パンを少しちぎり、手のひらに載せて母ネコに差し出した。
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にゃんこ3兄弟と友達になりたい秋田犬こむぎ
最初の勢いはどこへやら(笑)。
近づきたいけど、逃げてくれないと戸惑ってしまうこむぎでした💦
今日も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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