ネコクイを追いかけろ! 第6話
「ネコクイを追いかけろ!」は、瀬戸内海に浮かぶ小さな島で夏休みを過ごすことになった少年の成長物語です。
こんにちは。
秋田犬と暮らして23年、2頭の秋田犬を天国に見送り、現在2頭の秋田犬、虎毛の『ぱたこ』と赤毛の『こむぎ』との日々を楽しんでいるぱたこ母です。
今回も最後まで読んでいただけたら嬉しいです。
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【 第6話 】
「空き家に勝手に住みついてるんだぜ。」
「ふーん。相当な変わり者だね。」
ボクの答えに、
「あたりまえだろ。なんてったってネコクイなんだから!」
と俊二はとんでもない間抜けでも見るような目つきでボクを見た。
「とにかく隠れるぞ。」
俊一の号令に、
「待てよ、家の中を見てみようぜ。
もしかしたら中に子ネコがいるかもしれない。」
と俊二がもちかけた。
「やばいよ、人の家に勝手に入るなんて。」
ボクが止めると、俊二は鼻で笑いながら言った。
「やっぱり都会っ子は弱虫だな。
そんなこと言って本当は怖いんだろ!」
「そんなことないよ。
ただ、人の家に勝手に入るのはマズイって言ってるだけじゃないか。」
けれど本心は違った。
こんなおばけ屋敷みたいな家に入るなんて、想像しただけでぞっとしてしまう。
だけど、こんなふうにばかにされて、おめおめと引き下がるわけにもいかない。
ボクは俊一に望みをかけた。
「俊一はどう思う?
人の家に勝手に入るって。」
「うーん、そりゃマズイけど、でもここはもともと空き家だろ。
ネコクイだって勝手に入り込んでるんだし、別にいいんじゃない。」
その一言で、ボクたちがとるべき行動は最悪な方向へと決まってしまった。
俊二が入り口の戸を横に引くと、大きな音をたてながらもすんなりとあいた。
最初に俊二が中に入った。
その後に俊一が続き、ボクも恐る恐る足を一歩踏み入れた。
真っ暗な家の中は空気がひんやりと冷たく、時間が止まっているようだった。
ずっと閉め切ってあったために、なんだか腐った木のようなにおいがする。
「おい、早く来いよ。」
入り口で立ち止まっているボクを振り返り、俊二が声を殺して呼んだ。
暗闇に少しずつ慣れてきた目に、家の中がうっすらと浮かび上がった。
どうやらボクが今立っているところは広い土間になっているらしく、俊一と俊二は左手にある部屋に上がろうとしていた。
おいていかれては大変と、慌てて後を追おうとしたボクの足元を変なものがすり抜けて行った。
ボクは肝が縮み上がり、声にならない叫び声をあげた。
なめらかでヒンヤリとしたその変なものは、玄関を抜けて外に飛び出して行ったようだったけど、ボクは恐怖で体がゴチゴチに強張り、少しも動けなくなってしまった。
「何やってんだよ! 奥に行くぞ。」
「へ、へんなものが・・・」
ボクはやっとのことでかすれた声を振り絞った。
「変なものって?」
「へ、へんなものだよ!」
ぼくの頭は真っ白で、ばかみたいにそう繰り返すことしかできなかった。
「変なものって妖怪か?」
そんなボクをからかうように言った俊二のその言葉に、ボクの全身から血の気がひいた。
「よ、ようかいって・・・。
妖怪がでるの? この家。」
「知らねえよ。
だけどネコクイの家なんだから、妖怪がいたっておかしくねえだろ。」
俊二は鼻で笑いながら、ずんずん部屋の奥へと進んで行った。
「こうすけ、怖かったら外で待っててもいいぞ。」
俊一もそう言いながら、俊二の後について進む。
「待ってよ、行くよ。」
いくら怖くてもここで引き下がることはボクのプライドが許さない。
ここで逃げたら、こいつらに一生弱虫扱いされることは確実だ。
こいつらに出来てボクに出来ないわけがない。
ボクは自分自身にそう言い聞かせ、恐る恐る一歩を踏み出し二人に追いついた。
「でも、さっきのいったい何だったんだろ?
本当に妖怪かな?」
「どんな形だった?」
「どんなって、見てないから分かんないよ。」
「きっとヘビかネズミだろ。」
「あるいは巨大ゴキブリ。」
俊二がばか笑いしながら言った。
でもその言葉にボクは変に納得し、勇気付けられた。
そうだ、妖怪なんかこの世に存在するわけないんだ。
「そんなことより早く子ネコを探そうぜ。」
「うん。」
部屋の中には何にもなかった。
奥の部屋との境には襖もなく、畳の上には所々新聞紙のようなものが広げてあるだけだった。
「おーい、ネコ、ネコちゃーん、いるかーい?」
そう言いながら奥の部屋の突き当たりにある押入れの戸を俊一が開けた。
そのとたん、家が壊れてしまうのではないかというほどのもの凄い音がして、妖怪の大群が中からいっせいに飛び出してきた。
ボクも俊一も俊二でさえも大声で悲鳴をあげ、一目散に外に向かって逃げ出した。
「なに、今の?」
家の外に出ると、ボクたち三人は顔を見合わせた。
「ようかい?」
ボクの声は震えていた。
次回に続きます。↓↓↓
怖いもの知らずと怖がりさん
今日も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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