ネコクイを追いかけろ! 第8話

「ネコクイを追いかけろ!」は、瀬戸内海に浮かぶ小さな島で夏休みを過ごすことになった少年の成長物語です。

こんにちは。

秋田犬と暮らして23年、2頭の秋田犬を天国に見送り、現在2頭の秋田犬、虎毛の『ぱたこ』と赤毛の『こむぎ』との日々を楽しんでいるぱたこ母です。

今回も最後まで読んでいただけたら嬉しいです。

 

第7話がまだの方はこちらからどうぞ

ネコクイを追いかけろ! 第7話

第1話はこちらからどうぞ

ネコクイを追いかけろ! 第1話

 

【 第8話 】

驚いたボクたちは慌てて腕に抱いている子ネコを隠し、向きを変えて逃げようとした。

けれど驚いたのはボクたちの方だけではなかったようだ。

ネコクイもボクたちに気付くと急いで自転車の向きを変え、今来た道を小走りに下って行った。

そう、ネコクイの自転車のかごには残された二匹の子ネコが捕まえられていたのだ。

「追いかけろー!!」

俊二の掛け声に、ボクたちは全速力で駆け出した。

ネコクイは山から出ると、虫捕り網を投げ出して自転車に乗り、地底の道を猛スピードで駆け抜けた。

ボクたち三人も茂みの中から自転車を起こしてまたがり、後を追った。

上の公園から顔を覗かせて、子ネコがいなくなったことを悲しげに訴える母ネコの姿が目に入り、ボクは一瞬前かごに乗せている子ネコを公園まで届けてやろうかと迷った。

けれど、後の二匹を取り返すことが先決!

後を追ってそのまま突っ走った。

ネコクイは細い道を抜けて海へと出ると、とても年寄りとは思えない速さで海岸沿いの道を自転車で走り抜けて行った。

やっぱり妖怪なのかも・・・。

ボクは俊一と俊二の後ろを必死で追いながらそう思った。

しばらく走ると、ネコクイは左に折れる道へと入り、らせん状に上り坂になっている道を、スピードを落とさずに余裕で上って行った。

ここは隣の大きな島へと続く長い橋の入り口だ。

ネコクイの姿はおろか、俊一、俊二の背中もどんどん遠ざかっていってしまう。

ボクは腰をあげて立ちこぎし、乱れてきた息を意識しながら、もっと体力をつけておけばよかったと今さらながら後悔した。

橋へと入ると、さっきまで木々でさえぎられていた日差しがボクの背中を容赦なく照りつけた。

背中にストーブでも背負っているような暑さだ。

おでこからも腕からも太ももからも汗があふれてくるのがわかる。

一気にペダルをこぎ、勢いのついたところで足をペダルから外して伸ばした。

ふくらはぎがぱんぱんに張っている。

目に入ってくる汗をぬぐいながら海を見ると、きらきらと輝いていてとてもきれいだった。

遠くに大きな船が浮かんでいる。

あの船はどこまで行くんだろうと思い、そんな事考えてる場合じゃなかったと我に返った。

俊一たちにもう百メートル近く離されてしまっている。

足の痛みをこらえ、ペダルをこいでは放し、こいでは放ししながら、ほんとうに死に物狂いで追いかけた。

ほとんど足の感覚が麻痺した頃、ようやく橋の終点が見えてきた。

橋の中では片側一車線だった道路が、島に入ると同時に片側二車線に広がる。

その中を、ネコクイが車に混ざって堂々と、車道を走ることが当然のように行くのが見えた。

両脇を車にはさまれ、負けないスピードでぶっ飛ばしている。

とても東京では考えられない光景だ。

赤信号でネコクイが足止めをくらった。

その間に俊一と俊二が距離をかなり縮めたが、二人が近づいてくるのを見ると、ネコクイは赤信号の中をそろりそろりと上手に車をよけながら渡って行ってしまった。

けれど、これでボクも俊一たちに追いつくことができた。

「大丈夫か、ゲンタ?」

「えっ、ゲンタ?」

「あっ、ごめん!

こうすけだよな。

おまえってどっかで見たことあると思ったけど、ゲンタに似てるんだ。」

俊一が、まじまじとこうすけの顔を見ながら言った。

「本当だ! 坊主頭にして、鼻の横にほくろつけたらそっくりだ。」

俊二も穴が開くほどこうすけの顔を眺め、そう言って笑った。

「ゲンタってだれ?」

ボクは心の中で何かが引っかかったけれど、それが何なのかは分からなかった。

二人は、

「オレたちの親友。」

とそろって、そう答えた。

「よし、行くぞ!」

信号が青に変わるが早いか、ボクたちは勢いよく自転車を蹴り出した。

正面にはかなりの敷地面積の大型スーパーが広がっていた。

冷房の効いたあの中に入って、冷たいコーラを飲んだらどんなに美味しいだろうと思ったら、生つばがでてきた。

はるか先に見えるネコクイは、右に曲がってそのスーパーの駐車場に入ると、お店のほうに向かってどんどん走って行った。

ボクは右カーブが曲がりきれず、タイヤを滑らせて転んでしまった。

子ネコはと慌てて見たけど、自転車のかごのカバーがクッションになって無事だった。

ボクのほうは右ひざと右ひじをすりむき、右手の小指側からは血がにじみ出ていた。

以前のボクならここで全てを投げ出していただろう。

けれど今のボクは違う。

小指の下の血をぺろっとなめると、何がなんでもネコクイを捕まえようという強い気持ちでいっぱいになり、自転車を起こして必死で後を追いかけた。

駐車場を抜けてハンバーガーショップの前にさしかかると、すぐ近くの花屋の前で俊一が立ち止まっていた。

次回に続く

子猫たちが乗ったのは自転車のカゴですが、ぱたこむが乗るのはホームセンターのカートです😁

 

今日も最後までお付き合いいただきありがとうございました。

 

これまでの作品はこちらからどうぞ

たこ焼きぱたこの名前の魔法 第1話

リーフィーはボクの犬

誰が金魚を食べたの? 第1話

ベスの青いアサガオ 第1話

プリンス・ハエタロウ 第1話

チビの愛 第1話

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