雪降る日

『雪降る日』は離ればなれになってしまった仲良し秋田犬2頭のお話です。

こんにちは。

秋田犬と暮らして24年、2頭の秋田犬を天国に見送り、現在2頭の秋田犬、虎毛の『ぱたこ』と赤毛の『こむぎ』との日々を楽しんでいるぱたこ母です。

今回も最後まで読んでいただけたら嬉しいです。

 

【雪降る日】

水沢さんの家には、シロという名前のとっても大きな犬がいます。

毛の色がまっ白だから、シロという名前なのです。

とても元気で、お客さんが来ると、

「ワンワンワン!」

と、いつも威勢よく吠えます。

けれど、そんなシロが最近ちっとも元気がないのです。

実は水沢さんの家にはもう一匹、クロという名前のまっ黒な、やっぱりとても大きな犬がいました。

シロとクロはとても仲良しで、毎日一緒に庭で走り回って遊んでいました。

ごはんを食べるときも一緒、眠るときも一緒。

そして、いたずらをして怒られるときも一緒でした。

けれど先月の雪の降る寒い日のこと、初めて見る雪に興奮したクロは柵を飛び超えてどこかに行ってしまったのです。

それからというもの、シロは大好きなクロを失い、庭を走る元気も、お客さんが来た時に吠える元気もなくし、小屋の中に閉じこもったままになってしまったのです。

大好きな魚も一口しか食べず、骨が浮き出て見えるほど体は痩せ、いっぺんに年をとってしまったように見えました。

シロのあまりの落ち込みように、心配した水沢さんはシロを家の中に入れてやることにしました。

以前のような元気なシロの姿を見るにはどうしたらよいか、水沢さんと奥さんは頭を悩ませました。

シロの好きな鈴入りの小さなボールを買ってきて、シロの鼻の前で鳴らしてみましたが、ちらっと見るだけで遊ぼうとはしませんでした。

大好きだった鹿の骨も欲しがりません。

散歩にも行こうとしません。

やっぱりクロがいないとだめなのです。

今年二度目の雪が降る寒い朝、シロは自分の場所と決めた暖かいリビングのソファーの上で寝ていました。

奥さんがキッキンで卵を焼いていると、玄関のチャイムの鳴る音が聞こえました。

「はい、どなた?」

お料理の手をとめて、インターホンのモニターをのぞき込みますが、誰の姿もありません。

「おかしいわねぇ。」

首を傾げながら、奥さんはお料理に戻りました。

ふとリビングを見ると、クロがいなくなってからというもの自分からは動こうとしなかったシロが、ソファーから起き上がり、ヨロヨロと玄関に向かって歩いて行くではありませんか。

そのシッポは力なくも振られ、シロは確かに喜んでいるようでした。

「どうしたの?  シロ。」

その時、もう一度玄関のチャイムが鳴りました。

奥さんがモニターを見ると、黒い影が動いたような気がしました。

シロの嬉しそうな様子と黒い影。

「もしかしたら。」

奥さんはまさかと思いながらも、シロの後を急いで追いました。

「ウォン、ウォン」と切なそうな声を出すシロに急かされ、玄関のドアを開けると、そこにはシロ以上に痩せた体を雪でびっしょりと濡らした、かわいそうな姿の犬がいました。

しっぽをちぎれんばかりに振っているその犬は、シロがずっと待っていたクロでした。

チャイムは、クロが立ちあがって鳴らしたのでしょう。

その周りには、雪で濡れたクロの手形がいっぱいついていました。

「クロちゃん、おかえり。」

奥さんは涙で声が詰まり、それだけしか言えませんでした。

シロのお気に入りのソファーの上で、二匹は慈しむようにお互いの体をなめ合い、そして、幸せそうに体をよせ合って深い眠りにつきました。

 

終わり

 

見慣れぬ雪の探究に励むこむぎとはしゃぐ秋田犬ぱたこ

今日も最後までお付き合いいただきありがとうございました。

 

これまでの作品はこちらからどうぞ

たこ焼きぱたこの名前の魔法 第1話

リーフィーはボクの犬

誰が金魚を食べたの? 第1話

ベスの青いアサガオ 第1話

プリンス・ハエタロウ 第1話

チビの愛 第1話

ネコクイを追いかけろ! 第1話

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