緊急指令「ごうりきさんを見つけろ!」第2話
緊急指令「ごうりきさんを見つけろ!」は柴犬のマメがドッグコミュニティの仲間たちと活躍するお話です。
こんにちは。
秋田犬と暮らして24年、2頭の秋田犬を天国に見送り、現在2頭の秋田犬、虎毛の『ぱたこ』と赤毛の『こむぎ』との日々を楽しんでいるぱたこ母です。
今回も最後まで読んでいただけたら嬉しいです。
第一話はこちらから↓↓↓
【第2話】
夜10時50分、集会所目がけて、ボクは一目散に走った。
この爽快感。
胸に突き上げてくるワクワク感。
抜け出してくるためにはいろいろと下準備が大変だけれど、夜の脱走はやめられない。
今日も散歩から帰ると、喉の渇きを我慢して、
庭のすみの草むらをかぎまわるふりをした。
なぜって、水は小屋の前に置いてあるから。
いつも水を飲んでいるときにリードにつながれる。
でも、ボクが小屋の方に行かないと、
飼い主は
「自分で戻ってね!」
と言い残して家の中に入ってしまう。
ボクは信頼があついんだ。
夕飯のときもそう。
飼い主が家から出てくる気配がしたら、ボクは小屋からすっ飛んで草むらへと行く。
そうすると、
「ごはん、置いとくよ!」
ってまた家の中に入って行く。
それから後は、もう外には出てこない。
高校生のおねえちゃんとお父さんが帰ってくるけれど、
おねえちゃんはボクを無視だし、
お父さんは
「マメは今日も自由か! よかったな。」
って感じ。
二人ともボクの良き理解者だ。
でも一番大変なのはここから。
庭はフェンスで囲まれている。
ボクがすり抜けられるすき間はないし、飛び越えられる高さでもない。
信頼されてるって言ったけれど、実は脱走できない状況に安心してるだけだったりする。
穴を掘る、なんて面倒くさいことはしない。
人間と同じようにスマートにやるだけ。
家の中の電気が消えて真っ暗になったら行動開始。
音をたてないように、そおっと門に飛びついて立ち上がる。
レバーを前足でゆっくり下げて、
一歩、二歩と、上手に体重移動しながら扉を前に押す。
自分が出られるだけのすき間が開いたら、
倒れ込むように外に出る。
おしりで門を閉め、
帰ってきた時のために、レバーははまらないようにしておく。
集会所は畑の中にある物置小屋の横の桜の木の下。
リーダーを務めているシェパードのボスのほかに、ラニアとマーズも早々と来ていた。
桜の隣にあるキンカンの実を取ろうと、ラニアが必死になって木に飛びかかっている。
しまった、出遅れた!
ボクもダッシュでキンカン目がけた。
ラニアはちびだから、なかなかキンカンの実に届かない。
でもボクはラニアの三倍くらい大きいから楽勝だ。
木の前で軽くジャンプして、黄色い実を一つもぎ取った。
口から出して、マーズの前に置いてやる。
キンカンはマーズの大好物だから。
ビタミンCたっぷりで、お肌に良いらしい。
マーズは少し匂いをかいで、
でも食べずに横をむいてしまった。
「マメ、これまだ熟してないよ。」
となりでラニアがばかにしたように鼻を鳴らした。
「なんでも取ればいいってもんじゃないんだよ。」
「じゃあ、ラニア取ってみろよ。」
「あいにくボクはマーズと同じミニサイズなんでね。
それに、毛並みが命だから、野蛮なことはしないんだ。」
シャンプーしたてのサラサラの毛並みを自慢するように、ラニアは胸を張った。
「キンカン取ることのどこが野蛮なんだよ。
チビでとれないから言い訳してるだけだろ。」
「短足」
ラニアのその一言を聞き終わる前に、ボクはラニアに飛びかかっていた。
マーズが後ろに飛びのく。
ラニアはちびっこいからボクの下からすり抜け、耳にかみつこうとした。
その時、「ヴォン」とボスの低く恐ろしい声が聞こえ、
ボクもラニアも慌ててボスに向いて整列した。
「くだらないことで、いつもいつもけんかするんじゃない。」
ボクもラニアもうなだれた。
いつの間にかメンバーのみんなが集まっていた。
ミックス犬のミッキーにビーグルのルビー。
その他にも十匹くらいいる。
ボスを囲むように円になって、みんなおすわりの姿勢をとっている。
「実は今日集まってもらったのは、」
ボスがみんなを見回してから話し始めた。
いよいよ会議の始まりだ。
「無線の情報で知っているものもいるかと思うが、
行方不明の大岩ごうりきさんを探してほしい。」
「えっ、なんで?」
みんなが隣同士でひそひそ話す。
ボスは優秀な警察犬。それはボスの仕事じゃないか。
みんなそう思った。
次回に続きます。
【ナイトルーティン】暗闇の中を駆け回って夜遊びする秋田犬姉妹
今日も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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