緊急指令「ごうりきさんを見つけろ!」第3話

緊急指令「ごうりきさんを見つけろ!」は柴犬のマメがドッグコミュニティの仲間たちと活躍するお話です。

こんにちは。

秋田犬と暮らして24年、2頭の秋田犬を天国に見送り、現在2頭の秋田犬、虎毛の『ぱたこ』と赤毛の『こむぎ』との日々を楽しんでいるぱたこ母です。

今回も最後まで読んでいただけたら嬉しいです。

 

第1話はこちらから↓↓↓

緊急指令「ごうりきさんを見つけろ!」第1話

前回はこちらから↓↓↓

緊急指令「ごうりきさんを見つけろ!」第2話

 

【第3話】

「そのとおり、わたしの仕事だ。」

胸を突き出すようにしてボスは言った。

「しかし、この鼻を見てくれ。」

今度はなさけない顔になって、鼻を突き出した。

ボスの鼻からは、ゆるんだ水道のじゃ口のように、鼻水がぽたぽたぽたぽた、たれ落ちていた。

「おとつい、山に捜索に行った後から花粉症になってしまって、このざまだ。

面目ないが、こんな鼻では使いものにならない。

この事件、なんとか協力してもらえないだろうか。」

ボスが言い終わるとすぐに、

「はい、わかりました。」

と、ラニアがボスに負けないくらい胸を張って答えた。

みんなボスのことを尊敬し、憧れている。

ラニアの言葉を合図にみんながうなづき、一気に頑張ろうムードになった。

ここでも先を越されてしまったボクは、悔しくてラニアに飛びかかりたい衝動にかられたけれど、しかたがない。

ぐっと我慢して、大岩ごうりきさんは絶対にボクが見つけようと思った。

 

ボクたちはそれぞれ少数のグループに分かれて、自分たちのテリトリーを捜索することになった。

ということは、必然的にボクのグループはマーズとラニア。

嬉しい気持ちと嫌な気持ちが半分半分。

でも、ボスのため。

ボクたちはやる気満々で、畑ぞいの道を田んぼに向かって走り出した。

この町は田舎だから、夜の間はほとんど車も人もが通らない。

それでも注意して横断歩道を渡ると、すぐにボクの家が見えてくる。

二階の二部屋に明かりが灯っているのを横目に駆け抜ける。

おねえちゃんとしょうちゃんの部屋だ。

おねえちゃんは勉強があるから夜遅くまで起きていても怒られないけれど、しょうちゃんは違う。

ときどきだけど、十時にいったん寝て、お父さんとお母さんが眠ってしまう十二時過ぎに起きる。

なんのためか。

決まってる。

ゲームをするためだ。

ボクにはゲーム機のスイッチを押す音が聞こえる。

耳がいいからね。

でも、もしかしたら、それはおねえちゃんがミュージックプレイヤーのスイッチを押す音なのかもしれない。

その二つの音はとても似ているから。

そうだとしたら、まさかのまさかだけど、しょうちゃんは勉強をしているのかもしれない。

宿題が終わらなくて必死になってたりして。

まだ起きているしょうちゃんのことを考えながら走っているうちに田んぼに着いた。

少し遅れて、小さなラニアとかわいいマーズも到着した。

やっぱり足の長さの差だな、と優越感に浸っていると、

「マメ、君は思いやりがないね。」

とラニアが悔し紛れに言った。

はあ? とラニアを睨みつけると、

「マーズのことを考えて走ってあげないと。」

しまった。

マーズを見ると、息が上がってかなり辛そうだった。

「ごめん、マーズ。だいじょうぶ?」

マーズはうなづき、

「少し休ませて。」

と言って、両手足を伸ばして寝そべった。

横を見るとラニアも同じかっこうをしてお腹を冷やしていた。

ボクもやってみる。

少し水分を含んだ土がひんやりして気持ち良い。

「どこから探す?」

「大通りにいればとっくに見つかっているはずだから、

人が入って行かないようなところだな。」

ラニアがいつもの憎らしい口調で言った。

「そうね。わたしの家に行く途中に小さな雑木林があるわ。」

「あの線路沿いの?」

ボクはしょうちゃんとの散歩の時に一度だけ行ったことのある、その雑木林を思い浮かべながら言った。

大きな木がたくさん生い茂ったそこは、落ち葉が地面を覆いつくしていて、とても面白そうなところだった。

けれど昼間でもうす暗くて、ボクの言いなりのしょうちゃんも、さすがにその中に行くのは嫌がって、中には入らせてもらえなかった。

「そうだね。そこにいるかも。」

ボクは自分の好奇心からも、マーズの意見に飛びついた。

体から熱を発散させて元気を取りもどしたボクたちは、マーズの後に続いて歩きだした。

周りを注意深く見回して、大岩ごうりきさんを探しながら歩く。

「そういえば、ごうりきさんはいつもブツブツ呟いているって言ってたな。」

「ブツブツって、なんて?」

マーズが振り返りながら聞いた。

「さあ?」

ボクは首をひねった。

そこから先は聞いてない。

「たしか、『アチョー』だったような。」

ラニアが自信なさげに言った。

「アチョー、って?」

「こわい」

ボクとマーズと、それを言ったラニアまで、同時に震え上がった。

「アチョー、アチョー、アチョー、って叫びながら歩いてるわけ?」

「そうみたいだね。」

「こわすぎる。」

助けるつもりで探しているけれど、見つけ出した時点でやられてしまうんじゃないか。

そんな恐ろしい考えが、ボクたち三匹の頭をよぎった。

 

次回に続きます。

濡れていようが、どうしてもタイルの中心でまったりしたい秋田犬ぱたこ

今日も最後までお付き合いいただきありがとうございました。

 

これまでの作品はこちらからどうぞ

たこ焼きぱたこの名前の魔法 第1話

リーフィーはボクの犬

誰が金魚を食べたの? 第1話

ベスの青いアサガオ 第1話

プリンス・ハエタロウ 第1話

チビの愛 第1話

ネコクイを追いかけろ! 第1話

煙突富士の見える坂 第1話

パッチワーク 第1話

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