緊急指令「ごうりきさんを見つけろ!」第4話
緊急指令「ごうりきさんを見つけろ!」は柴犬のマメがドッグコミュニティの仲間たちと活躍するお話です。
こんにちは。
秋田犬と暮らして24年、2頭の秋田犬を天国に見送り、現在2頭の秋田犬、虎毛の『ぱたこ』と赤毛の『こむぎ』との日々を楽しんでいるぱたこ母です。
今回も最後まで読んでいただけたら嬉しいです。
第1話はこちらから↓↓↓
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【第4話】
雑木林の手前に、ボーダーコリーのシマシマの家がある。
シマシマはいつも集まりには出てこない。
ごうりきさんを見かけていないか聞こうと思って、椿の垣根越しにシマシマを呼んだ。
シマシマはすぐに飛んできた。
「今日はボスの手伝いで人探しよ。」
ご近所で一番仲の良いマーズが今日の仕事内容を伝えた。
「シマシマも手伝ってくれない。」
ボクはごうりきさんの情報を何か知っていないか聞こうと思ってそう言っただけなのに、
「いつも言ってるだろ。ボクは家族の見張り番をしなきゃいけないから、出かけられないって!」
シマシマはとがった鼻をいっそうとがらせるようにして、そう言った。
羊を集めるのが仕事の牧羊犬のシマシマは、
羊のいない今の生活の中では家族を羊に見立てて、必死に使命を果たしている。
ある時、マーズがシマシマにメリーさんの羊の絵本を見せたら、
羊のことばかり考えてしまって睡眠不足になってしまった。
羊が一匹、羊が二匹、って数えていると、誰だって眠くなってしまうのに、
反対に眠れなくなってしまうなんて。
かわいそうなシマシマ。
どんだけ仕事熱心なんだ、って思う。
アルプスの山奥で生まれていたら、きっと優秀な牧羊犬として活躍できただろうに。
今のこの生活の中では、シマシマのやっていることは、
通りを歩いて行く人に吠えるよりも無駄なこと。
それに気付いているのかどうなのか。
でも、気付いていたとしたって真面目なシマシマはやめられないだろう。
「大変ね。お仕事ご苦労さま。」
マーズは優しい声でなだめるように言い、
「アチョー、アチョー、アチョー、って叫びながら歩いてるみたいなんだけど、
そういう声、聞かなかった?」
と、続けて聞いた。
さすが、マーズ。
自分の仕事に理解をしめしてもらい、シマシマはいっぺんに機嫌が良くなった。
「静かに。耳を澄ましてごらん。」
シマシマは人懐こい口調でそう言うと、雑木林の方に視線を移した。
ボクたちもつられてそっちを向き、耳を澄ました。
「聞こえる?」
シマシマの問いに、ボクたちは頷いた。
微かにだけど、
「チョー、チョー」
という声が聞こえる。
「ごうりきさんの声だ。」
「やっぱり雑木林ね。」
ボクたちは確信した。
「行こう!」
シマシマにお礼を言い、ボクたちは走り出した。
さすがシマシマ。
家族を守るために、いつも周囲に気を配っている。
普段と違うことは、どんな些細な事でも見逃さない。
案外シマシマのやっていることも無駄じゃないのかも。
雑木林のすぐ手前まで来ると、「アチョー、アチョー」という声がはっきりと聞こえてきた。
「入り口はどこだろう。」
周りはガードレールで囲まれ、その下はボクたちの背の高さくらいの草がびっしりと覆い茂っている。
どこから入ったらいいのかわからない。
ガードレール沿いに少し歩くと線路に突き当たった。
その境目に、草がなぎ倒されて雑木林へと入って行けそうなちょっとしたすき間があった。
そこから中を覗き見ると真っ暗で、
弱い風に吹かれて木の葉が少し揺れているのだけが見えた。
静まりかえった空間の中、
「アチョー、アチョー」という声だけが響き渡り、不気味極まりなかった。
ごうりきさんはここから入ったのかもしれない。
少し怖かったけれど、ボクはかっこ良いところを見せようと、勇気をだして一番最初に足を踏み出した。
一歩、二歩、三歩と歩き、四歩目を出したとき、
ボクの体はバランスを崩し、そのまま下へと落ちてしまった。
ボクのすぐ後についていたマーズも、続けてボクの上に落ちてきた。
側溝の上に背の高い枯草がふたのように覆いかぶさり、落とし穴のようになっていたのだ。
次回に続きます。
夜の生き物パトロールを楽しむ可愛い秋田犬姉妹
今日も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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