緊急指令「ごうりきさんを見つけろ!」第6話

緊急指令「ごうりきさんを見つけろ!」は柴犬のマメがドッグコミュニティの仲間たちと活躍するお話です。

こんにちは。

秋田犬と暮らして24年、2頭の秋田犬を天国に見送り、現在2頭の秋田犬、虎毛の『ぱたこ』と赤毛の『こむぎ』との日々を楽しんでいるぱたこ母です。

今回も最後まで読んでいただけたら嬉しいです。

 

第1話はこちらから↓↓↓

緊急指令「ごうりきさんを見つけろ!」第1話

前回はこちらから↓↓↓

緊急指令「ごうりきさんを見つけろ!」第5話

 

【第6話】

ボクだけは上がることができる。

そうだ!

しょうちゃんを呼んでこよう。

さっき家の前を走ったとき、まだ電気がついていたから起きているはず。

ボクは少し後ずさりすると、そのままダッシュして、ジャンプした。

脱出、成功!

「助けを呼んでくるから!」

マーズとラニアにそう言い残し、ボクは全速力で家に向かった。

しばらく走ると、視界の先にボスが見えた。

「ボース!」

ボクは叫びながらボスにかけより、雑木林の側溝の中にごうりきさんがいることを伝えた。

「でかしたぞ、マメ!

みんなに集合をかけよう。」

尊敬するボスにほめられ、ボクは誇らしい気持ちでいっぱいになった。

「ボクはしょうちゃんを呼んできます。」

「よし、頼んだぞ。」

人の役にたつって、とっても良い気分。

いっこくも早くみんなと合流するために、しょうちゃんを呼びにボクは急いだ。

後ろから、雑木林に集合をかけるボスの遠吠えが聞こえた。

住宅街の中の細い道を走り、家が目前にせまったところで、角を曲がって若い一組のカップルが現れた。

「いないねぇ。」なんて言いながら、懐中電灯を振り回している。

こんな時間に出歩く人なんてめったにいないのに、運が悪い。

隠れないと!

そう思ったけれど、全速力で走っていたボクは急には止まれない。

「あれっ、犬が勝手に走ってる!」

女の人の方に見つかってしまった。

しょうがない。

こうなったら、このまま走って家に飛びこもう。

正面にいるカップルを避けるように、進路変更をして道の反対側に寄った。

家まで、あと三メートル、二メートル。

カップルは家の前で立ち止まっている。

一メートル。

カップルの横をすり抜けて、門の隙間に鼻を突っ込もうとしたその時、

男の人が急に動き、ボクの前に立ちはだかった。

びっくりして急ブレーキをかけたけれど、ボクは自分から男の人の腕の中に飛び込んでいってしまった。

「脱走犬、捕獲!」

「放せよ! ボクんちはここなんだよ!」

と叫んでみても、通じるはずもない。

がっちり抱きかかえられてしまい、全力で暴れても逃げ出せない。

大ピンチ。

一世一代の不覚。

「どうする? 脱走犬は保健所だよね?」

女の人の言葉に、ボクは縮み上がった。

保健所って、一回入ったら生きては出て来られないっていう噂の、あの保健所?

「でも、夜だからやってないんじゃない?」

「じゃあ、警察?」

「保健所も警察もいらないよ。ボクの家はここなんだから。」

ボクは恐怖でガタガタ震えながら言った。

「そうだな。110番して。」

「しょうちゃーん! 助けてー!」

ボクは思い切り叫んだ。

何度も何度も叫んだ。

すると、二階の窓が開き、しょうちゃんが顔を出した。

「あれっ、マメ?」

助かった。

「この犬のこと、知ってるの?」

男の人がボクを上にかかげながら、しょうちゃんに聞いた。

「たぶん、うちのマメだと思います。」

窓から身をのりだし、ボクの顔をよく見ながら、しょうちゃんは言った。

「そうだよ。そうだよ。」

と、ボクは甘えた声をだした。

「今、そっちに行きます。」

と言って、しょうちゃんは外に出てきてくれた。

「おかしいなぁ? 門が開いてたのか?」

ボクを庭に下ろしながら、しょうちゃんは首を傾げた。

「もう脱走するんじゃないぞ、マメ!

ゲーム、いいとこだったのに。」

ぶつぶつ怒りながら、しょうちゃんはチェーンを手に小屋の前でボクを呼んだ。

「早く来いよ!」

「しょうちゃん、ちょっとだけお願い!」

ボクは門の前でくるくる回りながら、必死に頼んだ。

「もう、いいかげんにしろよ。

こんな夜中に散歩になんて行けるはずないだろ。」

「散歩じゃないよ!

ごうりきさんが助けを待ってるんだよ。」

しびれをきらせたしょうちゃんは、チェーンを手から放すと、ボクを捕まえようと走ってきた。

しょうちゃんに捕まるほどボクはのろまじゃない。

目前まで引き寄せて、さらりと身をかわす。

また引き寄せて、身をかわす。

そんなことを何度かしたら、しょうちゃんは本気で怒りだした。

「マメ! ほんとに怒るぞ。」

もう、怒ってるじゃん。

「いいかげん、わかってよ。

ちょっとだけでいいから、来て!」

ボクは再び門の前に戻って叫んだ。

「ワンワン、ワンワン、うるさいんだよ!」

「ワンワンなんて言ってない!

ごうりきさんを助けてって言ってるんだよ。」

ボクたちはワンワンなんて言っていないのに、人間はなんでもワンワンで済まそうとする。

「わかった。」

しょうちゃんは低い声でそう言うと、家の中に入って散歩用のリードを持ってきた。

「さすが、しょうちゃん!

話がわかる。」

ボクはしっぽをちぎれんばかりに振り回した。

けれど、喜んだのも束の間。

ぬか喜びだったとすぐにわかった。

素直にリードにつながれた瞬間、しょうちゃんは小屋の方に向かって歩き出した。

 

次回に続きます。

どんなに説得されようとも雨の中でのトイレは断固拒否する秋田犬こむぎ

今日も最後までお付き合いいただきありがとうございました。

 

これまでの作品はこちらからどうぞ

たこ焼きぱたこの名前の魔法 第1話

リーフィーはボクの犬

誰が金魚を食べたの? 第1話

ベスの青いアサガオ 第1話

プリンス・ハエタロウ 第1話

チビの愛 第1話

ネコクイを追いかけろ! 第1話

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