クララになれなかった私~青い空の舞台と、もふもふの観客~ (第五話:最終話)

クララになれなかった私~青い空の舞台と、もふもふの観客~は、小6のサエが秋田犬のマルや近所のいくちゃんと自然の中で過ごすうち、バレエを踊る純粋な喜びに気づき、再び情熱を取り戻すお話です。

こんにちは。

秋田犬と暮らして24年、2頭の秋田犬を天国に見送り、現在2頭の秋田犬、虎毛の『ぱたこ』と赤毛の『こむぎ』との日々を楽しんでいるぱたこ母です。

 

今回も最後まで読んでいただけたら嬉しいです。

 

第1話はこちらから↓↓↓

クララになれなかった私~青い空の舞台と、もふもふの観客~ (第一話)

前回はこちらから↓↓↓

クララになれなかった私~青い空の舞台と、もふもふの観客~ (第四話)

 

(第五話:最終話)

「いい? スタートさせるよ!」

三人でならんで座って見つめるテレビ画面には、『くるみ割り人形』の文字が大きく映し出されている。

「ちょっと、待って! ばあちゃんも見たいから。」

とキッチンからイスを引きずって来ようとするばあちゃんを見て、サエといくちゃんは同時に立ち上がった。

二人は顔を見合わせて笑い、

「ばあちゃん、私たちが運んであげる!」

と、自分たちが座っていた後ろに二人でイスを運んだ。

ばあちゃんはうれしそうににこにこ笑って、「ありがと」と言いながらイスに腰かけた。

「じゃあスタートさせるよ!」

「うん!」

いくちゃんとミナが声をそろえて返事をすると、ミナの横で眠る体勢に入っていたマルも、目だけ動かして視線をテレビ画面へと向けた。

散歩のときに三人がハミングしていた曲が静かに流れ出し、クララ役のサエが軽やかなステップで登場した。

「サーちゃんだよ!」

とミナが指さす。

「サエちゃん、きれい!」

といくちゃんがうっとりした声をあげた。

いつの間にか、サエの投げだした脚の上にマルが横たわっていた。

「ありがと。」

照れくささを隠すために、サエはマルの背中をなでながら、テレビから目を離さずに小さな声で言った。

その時、

「えーっ!」

と、いくちゃんがとつぜん叫んだ。

みんなの視線がいくちゃんに集まる。マルものっそりと顔をひねっていくちゃんを見る。

「クララのお母さん、」

とテレビを指さしながら、

「青山先生じゃない?」

といういくちゃんの言葉に、

「そうだよ。」

とミナ。

「やっぱり!」

「いくちゃん、青山先生のこと知ってるの?」

「知ってるよー!」

サエの方を向いたいくちゃんのほっぺは興奮で赤くなっていた。

「だって私も習ってたんだもん! 青山先生に!」

「えーっ!!」

今度はサエが大声を上げた。

「ほんとに!?」

「ほんと、ほんと!!」

サエもいくちゃんもミナも、なんだかうれしくて大笑いした。

三人の楽しそうな様子に、マルも仲間入りしようと立ち上がり、しっぽを振りながらみんなの顔を順番にぺろっとなめて回った。

「そりゃ、すごい偶然だね。」

というばあちゃんの言葉に、

「運命だよ! 運命!」

とサエが返し、いくちゃんとミナも「運命だね!」とくり返した。

「ちょっと待って!」

とサエが声をはり上げる。

「いくちゃんが習ってたのって、何年生の時?」

「この島に引っ越して来たのが二年生になったばかりの時だから、一年生の時までだよ。」

いくちゃんはそう言ってから少し考えこみ、サエの顔を見る。

「出てるよ! 一年生の時、ねずみたちの役で、」

「夏の発表会!!」

いくちゃんとサエの声が重なった。

「私もねずみたち!!」

二人は両手でタッチして笑い転げた。

「ほんとに運命の二人だね!」

と、ばあちゃんも手をたたいて大笑いした。

「ミナは?」

「ミナはまだ習ってなかったね。」

「えーっ!」と不満そうに口をすぼめるミナには気もとめず、

「あるはず」

と、サエはリモコンを操作した。

「ありますように。」

と、いくちゃんは手を合わせてお祈りした。

青山バレエ教室のアカウントをスクロールしていくと、探している動画はすぐに見つかった。

再生ボタンを押して、ねずみたちが登場するシーンまで早送りする。

「いたー!!」

サエといくちゃんの声がまた重なった。

「ほら、ここ!」

と、サエが立ち上がってテレビの前に行って画面を指さすと、

「えっ、そのとなりが私!」

といくちゃんも指さした。

「こんな近くにいたんだ!」

「ほんとだねー!」

テレビ画面の中では、他のねずみたちと一緒に、小さな二人が満面の笑顔で楽しそうに飛びはねていた。

 

 

サエとミナが島から帰る日には、ばあちゃんの足はフェリー乗り場まで歩いて来られるまでに回復していた。見送りにはいくちゃんとマルも来てくれている。

チケットを買いに行ったばあちゃんは、久しぶりに会う島の人たちと話しこんで、なかなかもどってこない。

「また来るからね!」

とマルの首にだきつくミナの横で、サエといくちゃんはかたくつないだ手を離せずにいた。

「発表会、ぜったい見に来てね。ネズミの王様、がんばるから!」

「うん、ぜったい行く! サエちゃんのネズミの王様見に。」

いくちゃんはつないでいる手にもう一方の手をそえた。

「それからね、ママが言ったんだ。」

「えっ?」

サエは首をかしげて次の言葉を待った。

「一人でフェリーに乗って教室に行けるなら、バレエ習ってもいいって!」

「えーっ! すごい!!」

「サエちゃんの教室とはちがうけど、もしかしたら舞台の上で会えるかも。」

うん、うん、とサエはうなずきながら、いくちゃんとつないだ手に力をこめた。

二人の頭の上ではシロツメクサの花かんむりが太陽の光を浴びて輝いている。

サエは早くバレエが踊りたくてしかたがなくなった。

終わり

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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これまでの作品はこちらからどうぞ

たこ焼きぱたこの名前の魔法 第1話

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